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ハチ刺傷/アナフィラキシーショック
          


・ハチの種類と違い
 ・スズメバチやアシナガバチの場合:針は何度でも刺すことが可能です。
 ・ミツバチの場合:針はノコギリの歯のようなトゲが付いているため、針は刺入部から抜けなくなり、
 毒嚢ごとハチの体から離れてしまうことが多いようです。

・刺された時の対処法
・ミツバチの針をつまんで引き抜こうとすると、さらに毒液を体内に注入することになるので、
 人差し指と親指を使い、爪ではじき飛ばすように除去するのが有効なやり方です。
・刺傷部位を絞っても、ハチの毒液はほとんど除去されません。


・単発の刺傷
 ・ハチに刺された場合、直接ハチ毒の薬理作用によって死ぬことはありません。
 ・刺された部位の痛みは激しいが短時間で軽快します。
 ・刺傷部を冷却し、静かに仰向けとなり、頭を低くし襟をゆるめて休息します。


・複数のスズメバチやアシナガバチに刺された場合
 
  刺傷部位を冷却するくらいでは済まないので、早急に医療機関での受診が必要です。
  特にアナフィラキシーショックを起こしている人は、救急車での搬送が必要です。

*ハチアレルギーによるアナフィラキシーショック
・ハチ刺傷によるアナフィラキシーショックの死亡者数は、毎年約30〜40人近くに及んでいます。
・全身性アナフィラキシ―ショック状態になるのは、以前ハチに刺された経験がある人です
 ハチに刺された人の1〜2%にショックが起こるとされています。

アナフィラキシーショックとは、特定の物質が摂取されて体内に抗体(IgE)ができ、その物質が
  
再度体内に入ると、初回よりも急速に激しくおこるアレルギー反応をいいます。
  (※そばなどを食べて、ショックをおこす食物アレルギーはよく知られています。 )
 ・ハチ毒はIgE抗体と肥満細胞とに結合します。肥満細胞が活性化され、ヒスタミンなどの有害な
 化学伝達物質が体内に大量に放出され、体の各臓器に作用して様々な症状を引き起こします。

・症状
・全身にじんましんがでる。
・咽頭、声門の浮腫、気道収縮によって呼吸ができなくなる。

・顔面蒼白・脈が速くなる・吐き気・気分が悪くなる・呼吸困難などの全身症状。
 血圧が急に低下し、意識がなくなる。
・これらの症状は刺されてから数分〜10分以内におこります。
 少なくとも1時間以内に緊急処置をしないと死に至ります。
・小児は軽症ですみますが、18歳以上になると重症になるケースが多いようです。


・予防対策
 
 ・これまでハチに刺されたことがあり、じんましん、くしゃみ、鼻づまり、胸のしめつけ、
 クラクラして倒れるなどの症状のあった人は要注意!!
  ・ハチ類の生態などの知識を身につけ、ハチには近づかないことです。
  ・ロイヤルゼリーなどの食品を食べる時には注意します。(※1補足)
  ・ハチ毒急速減感作療法が試みられています。

*エピネフリンの自己注射用の携帯装置
 
   ・以前から、森林関係者などの間では救急薬品としての必要性が叫ばれていました。
    すでに海外では20カ国で20年以上使用されていますが、日本では最近許可されました。
   ・商品名は「エピペン」や「アナキット」のエピネフリン0・3mgの自己注射セット。
    直径1.7cm、長さ14cmの筒状で、安全キャップを外し、太ももに直角に突き立てると、
    中から針が出て注射される仕組み(下図)。 
    ・万一のときは太ももに押しつけて自分で皮下注射します。
    糖尿病患者がインスリンを自己注射するのと同じ要領です。
   ・対象は、以前にハチのアナフィラキシーショックをおこした人や、一度ハチに刺された
    ことがあり再度刺されるとアナフィラキシーショックをおこす危険性の高い人です。
   ・自己注射が可能となることによって、死亡者は半減するのではないかと言われています。
 購入方法
   ・劇薬なので事前に医師の処方が必要となります。

    有効期限は、約1年と少し短いですので期限切れには注意が必要ですし、
    ほとんどの病院では、予約
購入になると思われます。  
    尚、平成23年から健康保険が適用されることとなりました。

   
 ※1「ロイヤルゼリーなどの食品を食べるときに注意を します」との内容について ご質問がありましたので補足致します。
  
 ロイヤルゼリーはミツバチの体内で合成されたタンパク質を主体とした 分泌物です。
   一方、ハチ毒もハチの体内で作られた物質ですが、毒針から排出される ものであり、ハチの咽頭付近から分泌されるロイヤルゼリーとは合成機 序が基本的に異なっていると思われます。
   しかし、ロイヤルゼリーもハチ毒も、ハチの体内で合成された物質とい う点においては同じわけで、それぞれの中に共通抗原物質が含まれてい る可能性は否定できません。
   もちろん、同じ抗原が体内に入ったとしても、刺入による場合と経口摂 取による場合とではアレルギー反応の出現様式は当然異なって来ます。
   ハチ毒によるアナフィラキシーショックのような症状がロイヤルゼリー の経口摂取で起こるとは考えにくいですし、ロイヤルゼリーによる重大 な事故がおこったという報告も確認できません。
   ただ、アレルギーのリスクを少しでも回避するという観点から、ハチア レルギーの危険性のある方はロイヤルゼリーの摂取について慎重に対応 した方が安全であろうと考えています。  院長 大谷洋一   


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