「腰痛予防について」(リハビリテーション戸塚 寛之)
先月、公開講座にてお話しさせて頂きました内容を簡単にまとめました。
1.腰痛について
腰痛とは、腰を主とした痛みや不快感が生じる疾患です。2022年の国民生活調査によると、病気やケガ等で自覚症状がある割合の中で、「腰痛」を訴える方は男女ともに1位に当たります。
腰の痛みの種類は大きく分けて「急性痛」と「慢性痛」に分類されます。さらに、MRIやレントゲン画像で原因がはっきりわかるものを「特異的腰痛」、原因がはっきりしないものを非特異的腰痛と呼びます。
腰痛の重症度には分類があります。
重症度は大きく分けてRed Flags、Yellow Flags、Green Flagsの3つに分類出来ます。Red Flagsに当てはまる症状は、骨折や脊柱管狭窄症などの重篤な疾患がある可能性があり、危険信号と言われています。Red Flagsに当てはまると感じた方に限りませんが、腰痛で日常生活に困っている方は、無理や我慢をせずに医療機関を受診する事をお勧めします。
腰痛は、様々な側面からの治療が必要です。
①身体的側面・・・【運動】急性期でなければ、安静にせず少しずつ運動量を増やすことで筋力や持久力の維持・向上を図ります。
②心理的社会的側面・・・【認知行動療法】「痛みが怖いから動かない」という否定的な認知に気づく必要があります。痛みを記録することで、適正な負荷量で生活は痛みとは連動しないことを学習します。
【教育的アプローチ】痛みの起こりにくい動き方やセルフトレーニングを理解し、安心感を得ていきます。
2.高齢者の腰痛の腰痛をきたす代表的な疾患
①腰部脊柱管狭窄症・・・腰椎部の神経の通り道(脊柱管)が狭くなるとその中に走る神経が圧迫され、下肢の痛みや痺れ、麻痺、時には股間のほてりや残尿感、便秘などが発生します。また、長距離を続けて歩けなくなる間欠性跛行は特有の症状です。
②脊椎椎体骨折・・・脊椎を構成している一つの椎体が骨折することです。骨粗鬆症に起因して尻もちなどの軽微な外力により生じるものです。
③変形性脊椎症・・・加齢により生じるもので、脊椎が退行変性した状態をいいます。変形が進んで高度になると、慢性の疼痛や可動域制限が生じ、稀に神経症状を生じます。
④非特異的腰痛・・・全世代で生じている腰痛の中で、約85%を占めていると言われており原因がはっきりしない腰痛のことを言います。
ロコモティブシンドローム
移動するための能力が不足したり、衰えたりした状態を指します。略してロコモと呼ばれることもあります。このロコモが進行すると将来介護が必要になるリスクが高くなります。現在、要介護状態になる原因の上位には、転倒や骨折や関節の病気など運動器の故障があると言われています。ロコモの予防が大切です。以前は、腰痛は安静が重要と言われていましたが、昨今では安静は最小限にし生活や仕事を続けることが重要と言われています。安静=ロコモのリスク増大につながる可能性もあります。
以下に、腰痛予防体操、ウォーキングについて掲載致します。合わせてロコモの予防にも活用していただければと思います。
参考資料
厚生労働省:2022年国民生活基礎調査
埼玉県理学療法士協会:広報誌パートナーVol.17
理学療法ハンドブックシリーズ3 腰痛
2025年10月3日 リハビリテーション
戸塚 寛之