ストレッチのお勧め  (院長)

患者さんから腰痛や肩こり、膝の痛みなどに関して相談を受けることがしばしばあります。加齢による骨や関節の変化だけでなく、いわゆる運動不足による筋肉の張りや関節の硬化が原因となっていることも多いと感じています。ストレッチ (Stretching)とは、筋肉を引っ張って伸ばして良好な状態にする行為です。ストレッチは短時間でどこでも行うことができるので、日常生活の中にぜひ取り入れて頂くことをお勧めします。

1.ストレッチの効果 

・疲労の回復             体に疲労を感じる原因の1つが「乳酸の蓄積」です。乳酸は疲労物質といわれていますが、ストレッチをすることで乳酸を体外に排出することができます。運動後や仕事の合間にストレッチするのは有効です。夜間就寝中に「足がつれてよく寝られません」という訴えはよく聞きます。これも「乳酸の蓄積」が関連している可能性があります。就寝前にストレッチをして乳酸を減らしておくことも一法かと思います。

                  

・腰痛・関節痛の軽減         肩こりや腰痛は、筋肉が縮んで硬くなることで起きている可能性があります。ストレッチで筋肉を伸ばしてほぐすことで血行も促進されるため、肩こりや腰痛の改善が期待できます。膝や肘などの関節は、意識的に動かさなければ収縮して硬くなり、動かしにくくなり痛みが生じることもあります。ストレッチによって関節を伸ばしたりほぐしたりすることで、痛みを和らげる効果が期待できます。

                           

・精神的な効果            ストレッチをすると、幸せホルモン「セロトニン」が分泌されます。また、適度な運動には自律神経の乱れを軽減する効果もあるため、心と体のバランスを整えることでストレスがたまりにくくなります。

          

「疲れた~!!」と感じたときはストレッチをしましょう。

2.ストレッチのやり方

私が毎日用いているアスレチックトレーナー佐藤義人氏の方法の一部をご紹介します(資料1)。佐藤氏は、ラグビーワールドカップ日本大会(2019年)の日本代表トレーナーで、試合で傷んだ選手を離脱させることなく再生しました。

1)基本ストレッチ:正しい姿勢をつくる

多裂筋とは背骨に沿って縦に張り付いている筋肉で体の軸をつくります。 (方法)両腕を伸ばして壁に向かって立ちます。壁から胸が離れないようにしながら、息を吐きながらゆっくり腰を落とします

 

2)腰痛のストレッチ

大腿(太もも)の前側の筋肉とお尻の筋肉の2カ所を伸ばします。壁に手を当てて支えにすれば、立った状態でも行えます。

 

3)肩こりのストレッチ上半身の筋肉をまんべんなく伸ばして、肩の筋肉の負担をとります。

 

3.ストレッチのコツ

1)20~30秒かけてゆっくり伸ばす

最初の5〜10秒は、関節や筋肉が伸びるための準備時間です。次に、伸ばしたい部位を意識しながら20秒以上かけて伸ばします。

2)痛みを感じるほど伸ばさない

痛みを感じるほど伸ばしてしまうと、かえって筋肉が硬直してしまうことがあります。腕や足を引っ張りながら伸ばすときは、強く引っ張りすぎず、気持ち良いと感じる程度にとどめておきます。

3)呼吸を止めない

ゆっくりとした深い呼吸をしながら行うと、緊張が和らぎ、関節や筋肉を伸ばしやすくなります。呼吸が止まると筋肉が伸びにくくなり、血圧が上昇する原因にもなります。

おわりに

・ストレッチはいつでも短時間でできます。昼間に疲れを感じた時には、気分転換もかねてぜひ行って下さい。就寝前には、ストレッチが一日の仕上げ、体へのねぎらいとなります。

・私は以前より腰痛があり、50歳の頃は週2回整体院でマッサージを受けていましたが、後輩の勧めでジョギングを始めてから腰痛が軽減しました。やはり、運動が第一だと思います。しかし、仕事中に腰や肩の張りを感じることは多いので、毎日数回ストレッチを行って体と心の疲れを癒しています。

 

(資料1)佐藤義人. 1分間だけ伸ばせばいい.アスコム 2019 東京

 

2024年4月22日

石川 進