ラグビーワールドカップ開幕(院長)

ラグビーワールドカップ・フランス大会が2023年9月9日に開幕しました。日本代表は初戦のチリ戦に勝利し、これからしばらくの間試合の勝敗に一喜一憂しながら過ごすことと思われます。今回は、ラグビーワールドカップに関して書きます。

 

ラグビーワールドカップ

 1987年の第1回大会より4年ごとに行われ、今回が10回目となります。日本は第1回大会よりアジア代表として出場しています。優勝国にはトロフィー(エリスカップ)が贈られますが、郵送賞金はありません。元々がアマチュアスポーツであったためで、名誉のために戦うのです。

第8回大会(2011)までの日本代表(ジャパン)の成績は芳しくなく、1勝21敗2分でした。流れが一変したのは、2015年の第9回大会です。日本代表は初戦で南アフリカ代表に勝利し、“史上最大の番狂わせ(通称ブライトンの奇跡)”と報道されました。指揮官のエディ・ジョーンズヘッドコーチは日系のハーフであり、日本流の戦い方(Japan way)を目指しました。また、南アフリカ代表のアドバイザー歴があり、対戦相手を熟知していたものと考えられます。この大会を3勝1敗で終えて、ようやくジャパンの新しい道が開けました。

 

2019日本大会の思い出

 第8回までのワールドカップはヨーロッパ、南半球のラグビー伝統国で開催されており、日本のようないわゆる新興国によるアジアで初めての大会でした。

大会直前の2019年7月より、テレビドラマ「ノーサイドゲーム(池井戸潤原作)」が放映され、元日本代表主将の廣瀬俊朗氏がメインキャストの一人(浜畑譲  役)として出演し話題となりました。

日本代表は、予選リーグを4戦全勝で突破し決勝トーナメントに進出しました。準々決勝では、優勝した南アフリカに敗れましたが、初めてのベスト8となり、日本中が興奮した1か月余りでした。私はこの大会を機会に次の二つの変化があったと感じています。

①「にわか」でも仲間にはいれます。

1970年代後半から80年代前半まで、空前の国内ラグビーブームがありました。

正月の日本選手権では国立競技場は満員となり、晴れ着姿の女性も多くみられました。こうした普段ラグビーに縁のない方々を、ラグビー経験者や愛好家は歓迎していなかった感がありました。一言でいえば、「ラグビーの試合は選手が命を懸けて戦う場であり、イベントではない」ということだったと思います。

それが、2019年ワールドカップ大会より一変しました。「ラグビーを初めて見に来た人でも、にわかファンでも、みんな仲間です。」となりました。まさに、日本中が一つに、ONE TEAMになった幸せな1か月半でした。

②参加国の国歌を歌う

試合前には両国の国家斉唱が行われます。2019年大会では、参加国の国家の歌詞(もちろんフリガナ付き)が配られ、観客が紙を見ながら歌っていました。今回初戦のチリ戦でも、紙を見ながら君が代を歌う外国人男性の姿がテレビで見られました。参加国と選手に最大限の敬意(リスペクト)を示す行動であり、日本大会が残した大切なものだと感じています。

 

2019年大会~現在

 2020年初めよりコロナ禍が始まり、ラグビーリーグ(リーグワン)の中断や国際試合の中止が相次ぎました。しかし、2019年大会以降、海外から多くの一流選手(国代表)が来日し、日本のチームでプレーしています。ラグビー後進国であった日本のラグビーが世界の中でも認知されつつあるのだと思います。

ラグビーの試合会場やテレビ中継では、判定やルールについて分かりやすい説明がされるようになりました。「みんな仲間だ」との配慮が続けられています。

ラグビーの代表資格は国籍ではなく、選手が所属しているラグビー協会で規定されます(所属協会主義)。これは、かつての大英帝国が植民地化した世界中の地域を中心にラグビーが広まったためです。国の代表になるための資格は、本人、両親、祖父母のいずれかがその国身であること、もしくはその国に一定期間(現在は5年)以上継続して居住していることなどです。今回の日本代表でも多くの外国出身選手がいます。彼らは母国ではなく日本を選び、日本代表として戦う仲間なのです(資料1)。

 

終わりに

ラグビーの楕円球は転がる方向が定まらず、時として勝敗を左右します。しかし、試合に勝つことは偶然ではなく、万全の準備に基づいた必然だと思います。楕円球をあやつる勝利の女神は、強者に向かって微笑むのです。楕円球がどちらに転がっても対応できるよう私も準備したいと思っています。

 

資料1:山川 徹.国境を越えたスクラム.中央公論新社2023 東京

 

付録:廣瀬俊朗氏との写真

2022年11月のフランス代表戦(国立競技場)の前に、慌ただしく撮らせて頂きました。

2023年9月16日

石川 進