学校検診で気づいたこと(院長)

2025年4月よりさいたま市立七里小学校の学校医となりました。私が前回学校医を務めたのは30年以上前ですが、現在は診察方法や検診前の準備が昔と変わっていました。4月の初回検診で気づいた点に関してご報告します。

Ⅰ.児童・生徒のプライバシーに対する配慮

近年では子供のプライバシーや心情への配慮が指摘されており、文部科学省からも「児童生徒等の健康診断時の脱衣を伴う検査における留意点について」との事務連絡(令和3年3月付)が出ています。昔は、男子は上半身裸で整列させて順次診察を行ったので大変効率的でした。今回は衝立の奥に一人ずつ入り、男子は着衣をまくって、女子は着衣のまま診察を行いました。もちろん、着衣では正確な診察が困難になる可能性がありますが、現実的な方法と割り切って行いました。

Ⅱ.家族からの質問が多かった事項

昔と比べて検診前の問診表(アンケート調査)が詳細で項目も多数でした。記載する家族の手間や担当する先生方の負担増加が心配になりました。家族からの指摘、質問事項が多かったのは次の3点です。

①湿疹がよくできる

湿疹の殆どはひじの内側にできる経度の湿疹とかゆみでした。原因には、アトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎、蕁麻疹、あせもなどの可能性があります。夏場はあせもが、冬場は乾燥による皮脂欠乏性湿疹が主な原因です。

すぐにできる処置として、かゆい部分を清潔にして保湿クリームを塗るなど乾燥への対策をすることです。また、皮膚を掻いてしまうと、かゆみを悪化させることがあるので、できるだけ掻かないことが大切です。症状が良くならずに悪化する場合には皮膚科医師の診察が必要です。また、湿疹が赤く、先端が盛り上がっている(丘疹)場合には、感染による湿疹(ジアノッティ症候群など)の可能性があります。

②右肩が下がっている

左右で肩の高さが違う原因は、大まかに分けて二つあります。一つは、重い荷物を持つなど、特に利き手側の肩を使いすぎている場合です。右利きの人は普段より右側を使うため、身体が右側に引っ張られて通常は右肩が下がります。

もう一つは、姿勢の悪さなどによる背骨や骨盤のゆがみです。まれに脊柱彎曲症という病気による場合もあります。

治療・予防法としてはストレッチが有効です。下図のようにバンザイするようにして肩を伸ばします。また、整体院や整骨院を一度受診してアドバイスを頂くのもよいと思います。

③朝起きられない

子供が朝起きられない原因としては、睡眠不足、睡眠の質の低下が主因と考えられます。必要な睡眠時間は、小学生(6〜12歳)は9〜12時間、中高校生(13〜18歳)は8〜10時間です。睡眠の質の改善には、睡眠の環境(部屋の明るさ、温度、音や寝具)を整えることや就寝直前の入浴、スマホやゲーム等を控えることなどが大切です。大人の場合は、起立性調節障害(低血圧)、睡眠障害、概日リズム障害(昼夜の逆転)、ストレスによる自律神経失調症、精神疾患(うつ病)などがありますが、まずは、生活習慣の改善(日中の運動習慣、ゆっくりした入浴、ストレッチなど)から試みる必要があります。

おわりに

・今回の検診では90分間で約150名の内科検診を行いました。一人当たり36秒と短時間なため、心臓・肺の聴診を主体に診察しました。

・健康維持の方法として、「ラジオ体操」は極めて有効です。全身の筋肉や関節をくまなくストレッチできるように考えられています。昔ながらの方法ですが、あらためてお勧めします。

2025年5月17日

石川 進