心房細動と脳梗塞 (院長)

外来受診の際に、動悸や脈の乱れを訴える患者さんがよくおられます。そのうちの一部の方では不整脈がみられ、治療を開始することがあります。心房細動は高齢の方ではよく見られる不整脈です。心房細動では突然死に至ることは殆どありませんが、脳梗塞や心不全などの合併症が問題となります。今回は、心房細動と脳梗塞に関して記載します。

*本文の要旨は、公開講座(2026/5/23)で発表しました。

Ⅰ.心房細動の起こり方

心臓は電気刺激で動いています。正常な状態の心臓では、右心房にある「洞結節」から規則正しく発信された電気信号が、刺激伝導路(下図の赤い→)を通って伝わり、心臓の筋肉がそれに反応して拍動しています。

心房細動では、心房で異常な電気信号が発生し、電気信号が旋回してしまうため、心臓の収縮が不規則になります。

心房細動では心臓の動きが不規則となるため、動悸、息切れ、めまい、胸苦しさなどの自覚症状の原因となりますが、40%の方では症状がないため要注意です。

Ⅱ.心房細動の頻度と原因

日本人の1~2%(100~200万人)に心房細動があると考えられています。心房細動の3大原因は加齢、高血圧・心臓病、飲酒で、その他にはストレス・過労やバセドウ病(甲状腺機能亢進症)などが原因となります。

Ⅲ.心房細動における脳梗塞の発生

心房細動では心臓の動きが不規則となるため、血液の流れによどみが生じます。
そのため、心房細動の発症から数時間~数日間で心臓内(主に左心房)に血栓が形成されます。心臓超音波(エコー)所見:下図

心臓内でできた血栓がはがれて(遊離して)脳へ飛ぶと脳梗塞となります。心房細動でできる血栓は比較的大きく、「脳」の太い血管が詰まった場合には広い範囲の脳梗塞を起こします。そのため、「死亡」や「重い後遺症」につながる可能性があります。

Ⅳ.心房細動の診断

長時間続く持続性心房細動(慢性)と短時間だけ起こってすぐ元に戻る発作性心房細動(一過性)とがあります。持続性の場合には心電図検査で診断できます(下図)。一過性の場合には通常の心電図などの短時間検査では見つけづらいため、ホルター心電図(24時間記録)を行います。なお、脳梗塞の発生はいずれの心房細動でも起こります。

Ⅴ.心房細動の治療

①薬物治療

・抗凝固薬:血液をサラサラにして脳梗塞を予防する薬ですが、鼻血、消化管出血などの副作用が起こることがあります。

・抗不整脈薬:脈拍を整える薬ですが、心臓の機能低下(心不全)や別の重症な不整脈を起こすことがあります。

②カテーテル治療

カテーテルで異常な電気信号を発している箇所を見つけ出して、焼灼(高周波)または冷凍凝固する根本的な治療です。現在は心房細動治療の第一選択となっていますが、適応となるか否かは専門医への相談が必要です。

おわりに

・安静時の脈拍は大人では1分間に60~80拍が標準です。心拍数の上限(安全域)は「220−年齢」が目安であり、高齢になるにつれて上限値は低くなります。緊張や運動などで脈拍が上がるのは普通ですが、頻脈(脈拍数100以上)の持続や自覚症状(動悸、息切れなど)がみられる場合には、病気の可能性(貧血、心臓疾患、慢性肺疾患など)があります。また、心拍数が150回/分以上の場合には急ぎの医療機関受診が必要です。

・私自身は30歳台の時に心房細動に関する臨床研究や動物実験を行なっており、博士論文となりました。また、2000年以降は心房細動に対する外科治療(メイズ手術)を行ってきました。心房細動とは深い関りがあり、思い出もあるテーマです。

2026年5月25日

石川 進