最近月日の経つのが早い(院長)

小学校の頃は長い夏休みがあり、新しい思い出がたくさんできました。ところが、大人になるにつれて、特に仕事を始めてからは1か月、1年があっという間に過ぎてきました。その理由として、仕事が忙しいからとか、自分の活動量が減ったからとか、自分なりに漠然と考えていました。しかし、大人の時間経過が早いのには科学的な理由があることを最近知りました。

千葉大学の一川 誠(いちかわまこと)先生の著書(集英社新書)をご紹介します(資料1)。先生のご専門は実験心理学で、実験で客観的に人間の心の特性を解明しようとする自然科学の一分野だそうです。主な研究テーマは「錯覚」についてで、対象物に対して実際とは異なった認識をしてしまう現象の分析です。

まず、時計の時間と人間の感じる時間(心的時計)とにはズレがあり、これは時間の「錯覚」です。心の中にある「心的時計」が、さまざまな要因によって進み方を変えるために、大人の時間は短く、子供の時間は長く感じられるのです。

1)代謝が落ちると時間が早く過ぎる

時間の経過には体の「代謝」が関係しています。「脳のどこかから神経信号が発信され、その信号の蓄積量が感じられる時間の長さに対応します。体の代謝が激しいと信号が速いペースで発信され、短時間で信号がたくさん蓄積されるので、体の外の時計の時間がゆったり感じられることになります」 代謝は大人より子どものほうが激しいので、子どもは時間をゆったり感じて1日が長くなるわけです。また、1日の中でも代謝が落ちている朝方は時間が速く過ぎ、代謝が上がってくる午後はのんびり感じられるのだそうです。

2)新しいイベントがあると時間が長く感じられる。

子供の頃は、毎日が新しいイベントや出来事の連続です。大人になると、ほとんどの出来事が経験済みであるためにイベントとしてとらえられなくなります。単調な毎日では前述の脳からの刺激がゆっくりになるため、時間が早く過ぎてしまうのです。ただし、素敵な人に初めて出会った時には、視覚的にはスローモーションのように見え、大人でも心の時間は長くなります。

3)加齢に伴う身体的機能の低下は、時間を短く感じる1つの要因。

加齢により動きが緩慢になるだけではなく、物事の判断にも時間が掛かるようになります。つまり、「まだそれ程時間は経っていないだろう」と感じていても、実際には時計の刻む1分、1時間、1日、1年は心的時計と比べると早く進んでいるため、あっという間に時間が経った気になるのです。年齢とともに、挨拶や話が冗長になるのはこのためだそうですー私も気を付けます。

 

私の対策

いまさら若返ることは不可能ですが、日々を長くしたいと考えて、以下のような抵抗を試みています。

①代謝を上げる

代謝を上げる方法はまずは運動だろうと単純に考えています。朝の散歩や体操はもちろんですし、入浴やシャワーも有効だと思います。私は新型コロナ期となってからは完全な運動不足です。最近久しぶりにスポーツジムに行き始め、ジョギングも再開しました。

②毎日の仕事、生活を1時間単位で区切る

仕事や日常生活を概ね1時間ごとに区切り、間延びするのを防ごうとしています。元々飽きっぽい性格なので長時間の集中は苦手ですが、1時間ごとにコーヒーブレイクをとれば反復でき、進み具合も確認できます。はかどらないことも多いのですが、次の1時間の予定を新たに調整しています。

③休日もいつも通りに生活する

まったりとした休日は休息のためには有効ですが、何もしないで夕方になってしまうと、少し寂しい気分になります。そのため、最近はいつもと同じ時間に起きて、シャワーを浴びて1日を始めています。朝から動くと予想外に用事がはかどり、それでも時間は余りたっていません。

④新しい何かを始める

刺激ある毎日を過ごすために新しい体験をしようと思っていますが、なかなか難しいです。そのため、依然やっていたのにご無沙汰となっていたことを再開したいと思っています。具体的には、スポーツ観戦(特にラグビー)、落語鑑賞、ローカルマラソン大会への参加などです。ちなみに、本ブログ原稿の執筆は私にとっては新しい体験です。何らかのイベントがある毎日を過ごすことで、感じる時間の長さを延ばしたいと思っています。

 

おわりに

皆さんの時間経過はいかがですか?子供の頃のような刺激やイベントに満ちた毎日を送ることは難しいですが、少しでも1日~1年を長く楽しんで頂ければ幸いです。

 

*資料1

1. 一川 誠.大人の時間はなぜ短いのか.集英社 2008 東京