適度な運動とは? (院長)

                

“適度な運動をしてくださいね。” 外来でいつも患者さんに言っている言葉です。しかし、申し訳ないことに、患者さん個々に適度な運動を指導したことは殆んどありません。今回は、年齢に応じた“適度な運動” に関して、運動の強度と消費カロリーの面から記載します。

 1)身体活動・運動の強度:メッツ(Mets)

身体活動や運動の強さを示す指標としてメッツという単位があります。メッツは、その活動時の消費カロリーが安静時の何倍になるかを表しています。身体活動とは、生活活動と運動を合わせたものです。

*図は日本口腔保健協会のホームページより転載

 

運動以外の日常生活も活動として計算できます。

 1.8メッツ:立ち話、皿洗い

 2.0メッツ:料理・洗濯、こどもを抱えながら立つ

 2.3-2.5メッツ:植物の世話、ピアノ演奏、ストレッチ、ヨガなど

 

2)必要な活動量

健康づくりのための身体活動基準があります(資料1)。

基準は65歳以上、18~64歳、18歳未満に大別されています。

65歳以上の基準は“1週間に10メッツ・時(3メッツの活動だと3.3時間)”です。

犬の散歩や歩行(3.0メッツ)の活動量は、1時間で3メッツ・時になります。

1日30分(0.5時間)の散歩を行えば

3.0(メッツ)X 0.5 (時間)X 7(日間)= 10.5 なので目標達成です。

*65歳以上では、どんな動きでもよいので、「毎日40分の活動」を行うことでも可です。

1864歳の基準は、23メッツ・時/週(3メッツ以上を毎日1時間)です。

 

3)身体活動のメッツ一覧

いわゆるスポーツでなくても、日常生活や家事でも水泳(6メッツ)やジョギング(7メッツ)の半分程度の活動量が得られます。

*図は糖尿病ネットワーク(ニュース、2006)より転載

 

4)消費カロリーの計算方法

消費カロリー=メッツ X 体重(kg)X運動時間(h)X 1.05 

*安静時代謝分を含む

具体的には、散歩(約3メッツ)を体重60㎏の人が1時間行うと、

 3 (メッツ) X 60(kg) X 1 (h) X 1.05 = 191 kcal となります。

1時間の散歩で約200kcalが消費されます。

 

まとめ

1)“適度な運動”とはいわゆるスポーツをするだけではありません。

それぞれの体調にあった活動を習慣として行うことで十分な効果が得られます。座敷や居間で一日を過ごし、テレビ、冷蔵庫、トイレのみの移動をする生活は望ましくありません。散歩が最もやりやすいですが、腰痛や下肢痛のある方は室内でのストレッチや体操でも大丈夫です。大切なのは、毎日継続することです。

2)活動によるカロリー消費はあまり多くありません。

肥満を防ぐには、活動量と食事量のバランスが大事です。減量(ダイエット)を目指す方は、食事から見直す必要があります。これは、食べたいもの、好きなものを控えるということではなく、量とバランスに気を配るということです。加齢とともに代謝が減少するため、若いころと同じ食事をしていると必ず太ります。

糖質制限は減量に有効とされていますが、過度に行うと体調不良(疲れ、風邪など)を招きます。お米や炭水化物の量を少し減らす(2/3~半分)程度が妥当だと思います。

3)夜食や間食は肥満の強い味方です。

昼間は、仕事や生活活動によるエネルギー消費があるため、空腹を満たしても影響は少ないです。しかし、夕食後は寝るまでの短時間なため、摂取したカロリーの大半は体に残ります。私は以前夕食後に好物の柿の種(1袋291kcal)を食べていましたが、カロリー的には前述の散歩1時間分(約200kcal)以上です。その頃は予想通り着実に太りました。晩酌が日課の方は、つまみをさっぱり系にするなどの工夫が必要です。

いわゆる生活習慣病(心臓病、脳卒中、がん、糖尿病、慢性肺疾患)を避けるためにも、適度な運動と適切な食事が大切です。

資料1:健康作りのための身体活動基準2013(厚生労働省)

 

2023年9月30日

石川 進