頭痛外来のご紹介              (内科  冨田愛美)

はじめまして、内科の冨田と申します。 
このたび、頭痛外来を始めさせていただくことになりました。 

①自己紹介 
私は1996年に大学卒業、研修医2年を終えた後、大学病院や所属していた神経内科の関連病院で臨床を学んだのと並行して、医療系大学院に進みました。 大学院では、頭痛のメカニズムに関する研究や、臨床研究を行いました。 その際、新米の私が海外(コペンハーゲン、ローマ)での研究会や学会発表に参加する機会をいただけたことは、大変貴重な思い出深い経験です。ご指導くださった先生方に今も感謝しています(文献1)。  また臨床では、医局主催の頭痛教室の司会や、懇親会のお手伝いをさせていただき、患者さんの生の声を聞くことができました。

 ②ここでいう頭痛とは、慢性頭痛(片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛)のことです他に原因となる疾患がなく、長く付き合っていくような頭痛です。 このような頭痛は残念ながら、世間ではあまり病気として扱われていない雰囲気があります。 いわゆる頭痛持ちの方も、「いつもの頭痛だから。」と薬を飲んで我慢してしまい、わざわざ病院に行こうと思わないことが多いようです。ところが慢性頭痛とは奥深いものです。 
15歳以上の日本人の8.4%の有病率とされている片頭痛(文献2)には、精神的緊張が解けた時に痛くなる、という特徴もあります。 せっかく仕事のない週末なのに、痛くて吐き気がして寝込んでしまう…など、家族や友人とのイベントに参加できなくなる方がいます。 赤ワインやチーズ、チョコレートなどの食べ物が引き金になったり、飛行機に乗って痛くなったり、生理との関係で痛くなったり、色々なパターンがあります。 

 ③片頭痛の特効薬はトリプタン系薬剤です。日本はアメリカから遅れること10年、まず注射薬から承認されました。 外来で注射前後に心電図をとり、胸部症状の副作用と心疾患との関連を調べたところ、明らかな相関関係はないことがわかりました(文献3)。 外来では、患者さんに頭痛日記を持参していただき、その頭痛が片頭痛であると診断できれば、患者さんと相談してトリプタンを処方します。副作用もなく痛みがすぐにおさまれば、これ程ありがたいお薬はありません。 けれど中には、市販薬がよく効く方(薬を変える必要があまりない)、特効薬は副作用で飲めない方、もともと禁忌の方もいて、その場合には一般的な鎮痛薬で経過をみたり、頭痛体操を積極的に取り入れたりします(頭痛体操は誰にでも有効です) 

 ④著名人と片頭痛、犬の頭痛?!   不思議の国のアリスが物語の中で大きくなったり小さくなったりするような症状が、片頭痛の方にみられることがあります。作者のルイスキャロルは片頭痛持ちでした。ピカソ、ベートーヴェン、ショパン、樋口一葉、芥川龍之介、その他、才能豊かな方々が片頭痛患者さんだったそうです。 また、当院の石川院長から「犬も頭痛があるようですね。」とのお話がありましたが、私は勉強不足で知りませんでした。私も石川先生同様 (病院ブログ 2023.5.26『ペットと健康』参照) 犬派に所属しています。子供時代から犬と一緒に暮らしてきました (雑種男→ビーグル女→ゴールデンレトリバー女・女→ミニチュアダックス男の子)。けれど、あいにく彼らから「頭が痛い」との訴えを聞いたことはありません。テレパシーは送ってくれたのですが。

⑤頭痛でお悩みの方へ。 
頭痛でお悩みの患者さんが、ご自分の頭痛をよく知り、うまく付き合って生活していくためのお手伝いをするのが、頭痛外来の役割だと思います。片頭痛に限らず、肩こりやストレスなどがきっかけとなる緊張型頭痛や、数週から数ヶ月の期間、連日激しく痛む(群発する)群発頭痛の方もおられます。コメディカルや事務の皆さんと協力して少しでもお役に立てる外来にしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

〈頭痛外来〉毎週 水曜日の午前中(10月25日より)    

★15歳以上の方(当院に小児科医が不在のため)

★発熱など明らかな感染兆候のない方

★基本は予約制 (空いていれば予約外でも対応致します)

文献1) Manami Tomita,Norihiro Suzuki,Fumihiko Sakai.TheDistribution of 5-HT 1B Receptors and the Effect of Anti-migraine Drugs Triptan in Trigeminovascular System of the Rat. KITASATO MEDICINE 32(3):173-178,2002.

2) Sakai F, Igarashi H : Prevalence of migraine in Japan : a nationwide survey. Cephalalgia 17:15-22,1997.

3) Manami Tomita,et al. Evidence against  Strong Correlation between Chest Symptoms and Ischemic Coronary Changes after Subcutaneous Sumatriptan Injection.Internal Med 41:622-625,2002

2023年9月27日 
冨田愛美(とみたまなみ)

女の子と僕 
「テレパシーを送っています」

画 トネコさん