CT検査の有用性と安全性(院長)

CT検査は「コンピュータ断層撮影」とも言い、X線を使用して体内の断層画像(輪切り画像)を撮影する画像診断技術です。1972年に登場にしましたが、その後の装置の進歩により、現在では臨床に欠かせない診断装置として役立っています。

Ⅰ.CT撮影装置の進歩

当初のCT装置は、患者さんの周りを管球が1周回転してCT撮影を行い、続いて寝台を少しずらして次の断面を撮影していく方式でした(図1)。しかし、撮影断面(輪切り画像)ごとにX線照射が必要であったため、撮影に時間がかかり被ばく量も多量でした。1990年頃に管球が連続して回転できる「ヘリカル(螺旋)CT」が出現し、一回の連続したX線照射で短時間に撮影することが可能となりました(図2)。

Ⅱ.CT検査の被ばく量

通常、身体への影響、発がんリスクの上昇をきたす放射線被ばく量は100mSv(ミリシーベルト)以上です。一方、単純CT検査(造影剤不使用)での被ばく量はおおむね2~10mSvです。同じX線を使う胸部X線検査での被ばく量0.4mSvと比べると多量ですが、CTで得られる情報量は段違いに多いため、被曝のリスクよりも早期に病気やがんの発見を行うメリットの方が大きいと考えられます。

なお、X線検査による被ばくでダメージを受けた細胞のほとんどは、そのたびに修復されて正常な細胞に戻ります。ただし、胎児は放射線の影響を受けやすいため、妊娠中や可能性がある方には原則としてX線検査はおすすめできません。

Ⅲ.CT検査の有用性

病気としては腫瘍、感染症、内臓の異常、骨折などの診断に非常に有用です。

具体的には、頭部(脳出血、脳梗塞など)、胸部(肺炎、肺がんなど)、心臓(狭心症、心筋梗塞)、腹部(肝臓、胆のう、膵臓など)、外傷や骨折の評価などです。

①脳出血

②肺がん

③肝臓がん

④狭心症(冠動脈造影CT検査)

Ⅲ.MRI検査との違いと使い分け

MRI検査は、強力な磁石と電波を使って磁場を発生させて行なう検査なので、

X線被ばくはありません。病気としては、神経組織(脳や脊髄)、腹部(肝臓、胆のう、膵臓)、骨や筋肉、血管などの詳しい評価が可能です。

CT検査の撮影時間自体は短く数分で終わり特に騒音もありませんが、MRI検査では撮影に20-60分程度かかり、かなり音もうるさいので専用のヘッドホンをつけながら撮影します。一般的には、広い範囲の迅速な検査にはCTが適しており、MRIは比較的狭い範囲の詳細な評価に用いられています。

 おわりに

・健康診断の精密検査には、現在CTが一般的に使われています。また、救急の患者さんでは早期の診断と治療開始が必須なため、当院では第一選択として用いています。

・CT検査の費用は健康保険の負担割合(1割、2割、3割)に応じて変わります。一般的な単純CT検査では、1割負担で約2,000円、3割負担で約6,000円です。

・CTで得られる情報量は格段に多いため、早期の病気発見や治療開始につながる可能性があります。

2025年10月28日

石川 進