ソラリスの海

今週水曜日、「生涯学習総論」の講義を終えたあと、水戸駅近くのギャラリーARTS ISOZAKIに向かいました。夕闇の迫るなか閉館前に滑り込めました。

私の尊敬する造形作家・伊藤公象(こうしょう)氏の個展が開かれていたのです。公象氏については、このブログでも紹介したことがあります(2020/6/3)。
まもなく90歳になられます。

ギャラリーの案内にこうありました。
「ARTS ISOZAKIでは2021年9月18日(土)から12月26日(日)まで、
当ギャラリーで2回目となります伊藤公象の個展「ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」を開催いたします。
本展タイトルである「ソラリスの海」は、有名なSF小説のものを借用しました。
海全体が一つの生命体になっている惑星で、宇宙飛行士の記憶が海によって
形象化されるという設定の物語です。
今回展示される新作は、シュレッダーによって「消された記憶」が泥漿と混ぜ合わされ、焼成されて、まるで沸き立つ海のような形象が出現します。
是非この機会に伊藤公象の「ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」を
ご高覧いただけましたら幸いです。詳細はARTS ISOZAKIの公式HPをご覧下さい。http://artsisozaki.main.jp/」。

ギャラリー自体が異色です。店のシャッターが丸く切り抜かれ、それをくぐって展示室に入るのです。
今までの公象氏の作品とは異なる世界が広がっていました。シュレッダーにかけたのは半世紀に及ぶ自身の紙資料とのこと。それを土に練り込んで焼き上げたそうです。過去を燃やし尽くし、新たな創造の世界を作ろうというのでしょうか。

公象氏の従来の作品は多面軟体の湾曲した襞が特徴です。眼前にあるのは、湾曲ではなく複雑な空間を有する直線的あるいは棘突起的な形状から成っています。複雑な隙間には紙片が存在していたはずです。それを全て燃焼させ、新たな世界を燒成させたと思うほかありません。

この情熱はどこから来るのでしょうか。
「生涯学習」を考え直しました。