メディカル・イラストレーションは手術の図ばかりではありません。
医学論文の総説や一般向けの医療解説の中で用いる図も含まれます。
多くの読者を想定した図となると、手描きよりはコンピュータ(PC)を使った描画法をお勧めします。自分が関わった仕事の一部を紹介します。版権が絡みますので、最終稿の前に描いた未完図を2枚、雑誌名とともに挙げます。

図1は、胎児の腹部の間膜構造を模式的に描いたものです。大人の膜構造(とくに膵臓の間膜)を理解してもらうために、様々な文献をもとに独自に描きました(永井秀雄.いわゆるmesopancreasの発生と臨床解剖.胆と膵 38:13-19, 2017)。

図2は、一般読者対象の医学入門講座で使ったものです。多くの脳図譜を参考に、また、脳模型をノコギリで切って自分の理解を深め、その上で着想を得ました。海馬を中心に脳の解剖と機能を模式的に、しかし医学的にはある程度の正確さで描いたつもりです(永井秀雄.医学入門番外編 (3) 頭頸部の解剖と病理〜海馬〜.常陽藝文2018年1月号)。

こうした図から私が何を言いたいのか。知りたいかたはぜひ原文に当たってください。

胆と膵 38巻 1号 いわゆるmesopancreasの発生と臨床解剖 永井秀雄

常陽藝文 2018年1月号(通巻第416号) 医学入門番外編 (3) 頭頸部の解剖と病理〜海馬〜 永井秀雄

PCで描いた絵は、線が均一で見やすくなります。美的センスを問われるのは全体の構図です。鉛筆と消しゴムで構想を練っていきます。鉛筆描きの原稿を完成させた後は、これをスキャンし、PCの画面で線を描いていきます。この最後の作業は私ではなく、助手(秘書)が受け持ってくれます。
私は助手にPhotoshopの手ほどきをしてあげただけです。私の描いた鉛筆画の線を忠実にPC上でなぞって描いてくれました。これで下地は完成です。色付けは私がします。色や透明度を工夫して置いていきます。何度でも繰り返し試すことができます。そこがPCの良いところです。

PCグラフィックスは個性的になりにくいと言われることがあります。しかし、決してそうではないと思います。私の手技はまだ初歩的ですので、素人っぽい感じが抜けません。一方、それはそれで味があると思っています。

図1 胎児の腹部の間膜構造(いわゆるmesopancreasの発生と臨床解剖より)

図2 頭頸部の解剖と病理〜海馬〜(常陽藝文2018年1月号より)