助け合いのありがたさ

3日前まで普通に歩いて元気にしていた人が発熱しました。熱があると、かかりつけ医にかかろうとしてもすぐに受診できません。当院に問い合わせがあり、発熱外来でコロナの検査を受けてもらうことになりました。
PCRの結果を待つ間、急に状態が悪化しました。外来担当医は原因を探るべく採血とCTを行いました。その検査の最中にも状態はどんどん悪化し、ショック状態になりました。コロナはPCRで否定されました。

当院には集中治療を行う人手・能力・設備がありません。関係者が総出で転送先を探しました。どこも引き受けてくれませんでした。10ヶ所お願いしてもダメでした。午後5時半をまわり転送はあきらめました。緊急入院させ、一刻も早く当院でできる処置を行うのがよいとの判断に至りました。私が担当することになりました。
内科一般病棟は既にお知らせしてあるように、コロナの院内感染で新規受け入れを停止しています。しかし、やむを得ません。事情を話したところ、人員不足にもかかわらず病棟は快く受けてくれました。個室管理とすれば感染リスクは抑えられる、最善を尽くそう。そう考え、治療を始めました。それでも、集中治療の専門の立場からすれば的外れがあるかもしれません。でもやるしかありませんでした。

一晩、しのぎました。翌朝、血圧と呼吸は落ち着きました。しかし、採血すると各種データは悪化していました。多臓器不全の状態です。
高次機能病院に送るしかない。朝から再び転院依頼をかけました。次々断られました。普通なら受けてくれる病院もノーでした。

コロナであれば県調整本部に強く働きかけることができます。県の威信をかけて県内の転院先を見つけてくれます。しかし、この人はコロナではありません。院内からひたすらお願いし続けました。放っておけば最悪の事態があり得ます。あってはならない。そう思っていたとき、ある病院から受け入れOKの連絡が入りました。助かって欲しいと願い、救急隊に託しました。

以前、土曜午後・休日の救急転送が難しいことを書きました(2020/11/21ブログ)。今回は平日の日勤帯での話です。コロナが影響しているのだと思います。
どこも大変な状況の中でベッドの遣り繰りをしているはずです。助け合いのありがたさを感じました。