昨日、所用で大宮医師会を訪れました。

玄関を入った正面の壁に扁額が掲げられていました。
右から左に「開心貫醫道」。

「心を開き医の道を貫く」と読めます。署名は「太郎」。印から武見太郎氏の書だと分かります。
武見氏は1957〜1982年の四半世紀、日本医師会長を務めました。日本医師会が底力を持っていた時代です。武見氏の在任期間は私の父親が埼玉県の飯能地区で医師会活動をしていた時期と重なります。世間付き合いがいまひとつだった父親が地区の医師会長になったのは武見氏の何らかの影響があったのかもしれません。

剛腕のイメージがある武見太郎氏ですが、「医の道」について重要な提言をしています。1980年ごろ、医業のプロフェッション性を論じ、国家や他人からの干渉・強制を受けないという意味で「プロフェッショナル・フリーダム」を唱えました。いま使われる「プロフェッショナル・オートノミー」の原点です。

注目すべきは、「〜からの自由」(消極的自由)であれば単なるエゴイズムの烙印を押されてしまう、むしろ「〜への自由」(積極的自由)という自己の理性による人類の進歩と社会の安定を図っていく、それがプロフェッショナル・フリーダムだ、というのが武見氏の考え方でした。
「自己の理性による人類の進歩と社会の安定を図る」。
医の原点というべきものです。

医療人すべてがこのような考えであってほしい、と私は思います。