先週土曜日午後、病院の仕事を終えたあと、熊谷市で開かれた埼玉県医師会小児救急医療研修会「小児救急のエッセンス」に参加してきました。
小児科、ましてや小児救急に関わることはこの40年一切ありませんでした。茨城県にいたときは、もう一生それはないだろうと思っていました。それでも小児救急の研修会に参加したのは、さいたま市に越してから毎日、多くの子どもを見る機会があるからです。人口増加の著しい大都市だけあって、街のあちこちに子どもが溢れています。赤ちゃんも多い。幼稚園児、小学生、中学生には毎日たくさん会います。今の病院の休日・夜間救急にも子どもがときに来ます。病院のすぐ隣は小学校です。私は健康のために歩くことが多いので、子どもの事故や心肺停止を目撃することがひょっとしてあるかもしれないと思うようになりました。何よりも、自分の孫どもが近くに住んでいるのです。何かあれば孫は助けたい・・・。
自分が苦手としてきた小児科を今から学んでみたい、と思っていた矢先に今回の案内が来ました。講義だけでなく実技もあるというので、普段着姿で出かけました。

素晴らしい講師陣でした。ただし参加者は私を含め9名でした。多くは若手医師でしたが、幸い、同年輩がもう一人いたので71歳の私が参加していても違和感はありませんでした。
小児科の授業は実に半世紀ぶり。小児の病気の話なのに、毎日診ている超高齢者に通じるものがありました。小児救急での評価法の第一は、「第一印象 badかgoodか」だというのは、高齢者の救急(あるいは大人の救急一般)にも通じる話です。意識状態、呼吸状態、循環状態をまず診ろ、も同じです。次の二次評価では「SAMPLE」(signs & symptoms症状、allergyアレルギー、medication内服薬情報、past history既往歴、last meal最終経口摂取情報、events病状経過)を知った上で診察に入る、というのも同じです。

実技は、12年前に茨城県でAHA BLS for HCPの1日コースを受講したときに小児BLSも演習していたので、ほとんど問題ありませんでした。2人で組んだ相方は私よりも3回りほど若い女性医師でしたが、息の合った胸骨圧迫と人工呼吸、 AEDを協同で行うことができました。

質疑応答の中で、成人では有効とされるhands-onlyのCPR(心肺蘇生)は小児ではダメなのか、という質問が参加者からありました。つまり、大人では胸骨圧迫だけでも一定の換気は得られるため、30:2(胸骨圧迫30回のあと換気2回)の人工呼吸は省ける、という考え方があります。講師の回答はこうでした。大人では目撃者のある心肺停止の90%は不整脈などの心原性であるのに対し、小児では70%は呼吸原性心停止である。血中酸素飽和度が下がってから心停止に至るため、黒い血を心臓マッサージで脳に送っても意味はない。小児では人工呼吸による換気が必要である。
いろいろ勉強になりました。
翌朝、親指の付け根が痛くて困りました。マネキンの赤ちゃんは硬すぎませんか。本番の経験のあるかた、どうなのでしょうか。