新しい言葉、古い言葉

日本の2020年新語・流行語大賞(ユーキャン、「現代用語の基礎知識」選)の年間大賞は「3密」に決まりました。選考委員会の7名の委員によって決まったようです。この大賞はどちらかというとその年に流行った「新しい言葉」から選ぶ傾向があります。
一方、11/30付のUSA Today紙によれば、アメリカの出版会社メリアム・ウェブスター社は2020年の単語(2020 word of the year)として「パンデミック(pandemic)」を選びました。メリアム・ウェブスター社は辞書の発刊で有名ですが、オンライン辞書も無料公開しています。2020年の単語の選定は、オンライン辞書の検索数を基に決まったようです。したがって新語よりは辞書に載っている「古い言葉」が選ばれることになります。ちなみに、WHOが新型コロナウイルス感染症をパンデミックと認定した今年3月11日の検索数は、昨年同日よりも115,806%多かったとのことです。
記事から引用すると、パンデミック(pandemic)はラテン語・ギリシャ語に由来し、パン(pan)は全て(all)(2020/5/11ブログ)、デミック(demic)はデモス(demos)すなわち人々(people)や人口(population)を意味します。パンデミックの初出は1600年代中頃。当初は普遍的(universal)の意味だったが、1660年代の医学分野では病気に特化して使われるようになった、とのことです。私なりに調べてみると、1664-1665年にロンドン大疫病(the Great Plague、イギリス最後のペスト大流行)がありました。おそらくこれを機に今のようなパンデミックの使われ方になったと思われます。新型コロナと同じような時代背景があったと言えます。

US Today誌の記事で興味深かったのは、人が辞書を引く理由は「知らない言葉だから」だけではないということです。言葉の奥にある意味を探る人も少なくなく、例えば、バレンタイン・デー前後になると「love」がよく検索されるとのこと。確かに、loveなんて誰でも知っている単語なのに、あらためてこれを辞書で引くなんて・・・、と思いつつ引いてみました*。確かに面白い。Loveの語源は12世紀以前に遡り、古英語のlufuに由来するそうです。古高ドイツ語のluba(愛)、古英語のlēof(愛しい)、ラテン語のlubēre・libēre(喜ばす)と同類とのこと。さらにlove(ラブ)がテニスなどではなぜゼロを意味するようになったか、の解説もありました。ロマンチックな12のフレーズ、愛の詩の例文など、親切すぎるほどの内容となっています。
*https://www.merriam-webster.com/dictionary/love

これを読んでしまうと、日本語の辞書で「愛」はどうなっているのか、知りたくなりました。日本語の無料オンライン辞書はそれなりにありますが、メリアム・ウェブスターほどの内容のものは見つかりませんでした。面白そうだと思っても有料サイトや著作権の怪しいサイトに誘導されてしまいます。
文化を育てるという意味で、日本の大手出版社の「度量」に期待したいところです。