〜埼玉県医師会主催web研修〜

先日、新型コロナウイルス感染症院内感染対策研修会〜埼玉県医師会主催web研修〜が開かれました(図1)。夜6時から8時まで2時間の研修でした。病院および介護施設を対象とし、1施設2名までに制限されました。新聞報道によれば約600施設、約750名が参加したとのことです(図2)。

当院も私と事務の2名が申し込みました。しかし、1施設2名までに限ることはないのに、と思いました。ほぼ全ての医療従事者が新型コロナ感染症を身近の問題として感じています。ならば、希望者全員が参加できるようにしたいと思いました。
それは簡単に実現できました。
PCに配信される研修会の実況を病院の会議室で放映し、自由に視聴してもらえばよいだけのことです。
事務が全職員にアナウンスをしてくれました(図3)。
参加申し込みは50人を越えました。医師・看護師だけでなく、技師、薬剤師、リハビリ療法士、事務職、など多くの職員が参加してくれました。会場として当初予定していた大会議室では密になりすぎるため、外来ホールも視聴の場に追加しました(図4)。
したがって、当院での視聴者は、埼玉県医師会が把握した2名ではなく、実は50名以上でありました。おそらく多くの病院・施設では当院と同様の対応をとったと思います。したがって、県内の当日の研修会参加者数は、新聞報道の750名よりもっと多かったはずです。

肝心の内容はどうだったでしょうか。
いくつかの知見を得ることができました。

さいたま市立病院 小山卓史 副院長の講演では、感染症指定病院の当時の最前線の様子がよく分かりました。当院が対応に苦慮した4月上旬、患者の受け入れを断られ、切歯扼腕したときのことを思い出しました(2020/4/13のブログ参照)。当時、感染症指定病院がいかに苦労されていたか、具体的な数字が出て分かりました。遅きに失したとは言え、状況を知り得たことは有意義でした。

自治医科大学さいたま医療センター 讃井將満 教授(図5左)の講演では、使命感に燃える医療者の熱い思いをあらためて知ることができました。「明朝には必ず引き受けるから、今夜だけは貴院で何とかして欲しい」とセンターの担当医師から言われ、安堵と緊張を感じたあの夜のことを思い出し、あらためて感謝しました。

西埼玉中央病院の坂木晴世 感染管理認定看護師(図5右)の講演は特に秀逸でした。クラスターとなった県内医療機関の検証から示唆に富む話を多くいただきました。院内感染の起こり方(職員の休憩室が危ない等)、職員の健康管理法、ゾーニングの考え方、防護具の着脱方法など、きめ細かなアドバイスがありました。面会禁止の解除についての考え方(感染防止・手指消毒を徹底すれば面会を段階的に認めてもよいのではないか)には共感できました。次亜塩素酸は一定濃度にして器材や物品の清拭に使うものであり、手指消毒に決して使ってはいけないことを強調されていました。私も賛成です。次亜塩素酸は人体に有害だからです。噴霧してもいけません。噴霧に有効性はなく、眼や呼吸器の障害を引き起こします。様々な日常の中で(例えばデパートや店の入口で)次亜塩素酸の誤用が実に多く見受けられます。

最後に、新型コロナウイルス感染症県調整本部の本部長である星 永進氏(埼玉県立循環器・呼吸器センター前院長)がコメントをしていました。第2波に備えて、患者を最重症、重症、中等症、軽症、無症状に分け、それぞれの症度に合わせた入院体制を構築する決意を述べられていました。星氏は外科仲間、飲み仲間、ゴルフ仲間として30年近くの付き合いがあります。彼の人柄と行動力からすれば、うまくまとめてくれると期待できます。

 


図1

 


図2


図3

 


図4


図5