新型コロナワクチン接種について

新型コロナウイルス感染が新たな局面に入りました。ワクチン接種に来られるかたがたの眼差しも真剣です。
接種に伴って注射部位の痛み・腫れという局所反応や、発熱・頭痛・だるさという全身反応が生じますが、幸い、当院では重い合併症はほとんどみられていません。しかし、他の医療機関からは稀とは言え、重篤な全身合併症が起きたという話も聞こえてきます。
感染力が強く、かつ重症化率の高いデルタ株の蔓延が危惧されますが、少なくとも現在のところ、ワクチン接種が済んだ医療従事者や高齢者では感染はかなり抑えられています。

発熱外来とワクチン接種を担当していると、難しい質問を受けるようになりました。
1)先日、肺炎球菌ワクチンを打ってもらったけど、コロナのワクチンはいつ打ったらよいか。
2)新型コロナに感染した人もワクチンを打ったほうがよいと聞いている。自分はこの間感染したが、今は回復して隔離解除になった。ワクチンはいつから打ってよいのか。
3)腎移植後で免疫抑制薬を服用しているが、ワクチンの効果や副反応はどう変わるのか。

1)については、別のワクチンを打つ場合、前後2週間空けるという理解をしていましたのでそのように答えました。2)と3)については調べる時間をもらいました。

あらためて調べてみました。
1)他のワクチンとの接種間隔については、厚生労働省(厚労省)のサイトのQ&Aによれば、「新型コロナウイルスワクチンとその他のワクチンは、互いに、片方のワクチンを受けてから2週間後に接種できます」とあります。しかし、最近(2021/7/16)出たアメリカCDC(疾病予防管理センター)の考察*では、以前は2週間空けるよう推奨したが、現在は同時接種も可能ではないか、となっています。三角筋に2つのワクチンを打つ場合は1インチ(約2.5cm)離すのがよいとのことです。
* https://www.cdc.gov/vaccines/covid-19/clinical-considerations/covid-19-vaccines-us.html
ただし、肺炎球菌ワクチンなどのアジュバント入りワクチンや生ワクチンと一緒に打ってよいかについては十分なエビデンスがまだないようです。当面、厚労省の指針に基づき2週間空けるのが無難です。なお、厚労省のサイトにも載っていますが、創傷時の破傷風トキソイドなど緊急性を要するものに関しては、2週間を空けずに接種してよいとなっています。

2)新型コロナに感染したことのある人がいつワクチンを打つかについては、同じく厚生労働省のサイトにあるQ&Aによれば、「感染後や治療後は、接種まで一定の期間をおく必要がある場合もありますので、いつから接種できるか不明な場合は、主治医にご確認ください」とあります。
「私に聞かれても」と文句を言いたくなりましたが、前述のアメリカCDCのサイトを覗いてみました。
これによれば、ワクチンは新型コロナウイルス感染の急性期から回復して隔離が解除になるまで打たないこと、となっています。では、解除からどのくらい経って接種するのがよいのか。「数ヶ月間(in the months after initial infection)は再感染の可能性が低い、その後は免疫が減弱して再感染の可能性は高まるかもしれない」と書かれています。やや曖昧な解説ではありますが、読み解くと2-3ヶ月後に接種するのがよいのではないか、と理解しました。

3)臓器移植後に免疫抑制薬を服用している人へのワクチン接種については、日本移植学会が最近(2021/7/17)「新型コロナウイルスワクチンに関する提言 第2版」を出しました。それによれば、「現時点では、臓器移植患者に対する COVID-19 ワクチンの有効性、安全性に関する情報が未だ十分ではないため、さらなる知見とデータの蓄積が重要である」としつつも、「臓器移植患者のCOVID-19ワクチン接種を推奨する」としています。加えて、「家族や介護者に対してのワクチン接種も推奨する」、「移植臓器の拒絶のリスクを避けるためにCOVID-19ワクチン接種時も普段通り免疫抑制療法を継続する」、「COVID-19ワクチン接種の状況にかかわらず、全ての移植患者が手指消毒やマスク着用、ソーシャルディスタンスなどの感染予防策を継続する」ことを提言しています。

こうした質問以外にも新型コロナウイルスワクチンの接種については、妊娠中はどうするのか、授乳中はどうするのか、自己免疫疾患を持っているときは大丈夫か、と聞かれたことがあります。その都度、調べて返事をしてきました。そのほかに、深部静脈血栓症の既往歴のある人はどうするか、抗体カクテル治療(2021/7/20ブログ)を受けた後はどうするか、などの質問が考えられます。厚労省やアメリカCDCの情報を参考にしていきたいと思います。