先日、男の日傘のことを書きました。男が初めて日傘を使って気づいた効用を挙げたつもりです。
ある人から、皮膚の保護のことが抜けているというご指摘を受けました。
確かに抜けていました。というか、日焼けやシミが嫌だから日傘をさすようになったのではないので、はなから皮膚のことは念頭にありませんでした。
日焼け止め(シミ防止)としての日傘の効用はもちろんあります。女性が日傘をさすのは、これが唯一無二の理由です。男は、最近の若い人の一部を除けば、日焼けはあまり気にしないのではないでしょうか。

皮膚がんの予防としての意味はどうでしょうか。白人では皮膚がんの発生が多いため紫外線を回避することが推奨されています。日本人はどうでしょうか。
日本皮膚科学会のウェブサイトをみると、皮膚がんをメラノーマ(悪性黒色腫)とメラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍とに分けて解説しています。どちらの項目も、予防では白人やオーストラリアのことに触れているものの、日本人のデータは載っていません。
それでも、「スポーツや野外の活動のときは必ず日焼け止めクリームなどを使用して過度の紫外線を受けないようにしましょう」(メラノーマ)、「海水浴、スポーツ、仕事などで長時間の紫外線を受ける場合は、日焼け止めクリームを使う、帽子や日傘を使う、長袖を着る、など紫外線を避けましょう。」(メラノーマ以外の皮膚悪性腫瘍)、「高齢になってから紫外線を避けても予防に意味がないわけではありませんが、若い頃にたくさん紫外線にあたっていた人は、皮膚悪性腫瘍を早期に発見して治療することが重要です」(同上)。
最後の注意は、高齢者では予防よりも早期発見・早期治療だと言っているように聞こえます。

30数年前、ドイツの大学に留学していたとき、大学の構内で異様な出で立ちの男性に会いました。痩せて背が高く、年齢は60歳前後、広いツバの帽子をかぶり、スカーフのようなもので顔を覆っていました。夏なのに長袖と手袋とをしていました。隣にいた若いドイツ人医師に「誰?」と聞くと、ニヤッとして言いました。
「皮膚科の教授。メラノーマ恐怖症Melanomaphobia!」
私も笑いました。
しかし、あとで知ったことですが、白色人種のなかにはメラノーマ恐怖症が相当数いるようです。現在でも、melanomaphobia(-phobiaは〜恐怖症という病名に使う医学用語)、fear of melanoma、melanoma scareなどのキーワードでネット検索をするとたくさんのサイトにヒットします。こうしたサイトの多くは、過度にメラノーマを恐れるあまりに日光を浴びない問題を指摘しています。
NHKのドクターGでも昨年12月、これに関係した症例を取り上げていました。
「ずっと疲れがとれない〜働き盛りの女性を襲う怖い病」
答えは、外出をせず、外出のときは日焼け止めをたっぷり塗り、長袖・手袋・日傘で紫外線を避ける、こうした生活を数年間続けていたことによるビタミンD欠乏症でした。
日光に当たらなさすぎるのも考えものということです。
何事もほどほどに、ですね。