日医かかりつけ医機能研修制度応用研修会

コロナが落ち着き、腰を据えて勉強にまた取り組むことができるようになりました。オンラインでしたが、9月下旬に日本膵臓学会、先週は日本胆道学会に参加しました。
昨日の日曜日、日医かかりつけ医機能研修制度応用研修会(DVD使用)に現地参加しました。電車で出かけました。

かかりつけ医関係の研修会は今回で3回目です(2019/8/26・2021/2/1ブログ参照)。
少子高齢化の問題がさまざまな視点で語られていました。多くのことを学びましたが、ここではフレイル(虚弱)について報告したいと思います。主に東京大学・飯島勝矢先生の講演を参考にしました。

高齢者の健康に悪影響を及ぼすのはフレイルです。フレイルは、筋肉量減少(サルコペニア)や骨・関節障害(ロコモ)によって身体活動が低下する身体的フレイル、うつや認知機能低下による心理的・認知的フレイル、閉じこもりや独居・経済的困窮による社会的フレイルなど多面的な病態から成っています。

フレイルでは多くの場合「痩せ」が問題となります。
若年〜中年では栄養過多は肥満・メタボに繋がり寿命を縮めますが、高齢者では肥満・メタボはほとんど問題になりません。高齢者はBMI 27-28程度の「肥満」が最も死亡率が低いとされ、BMI 20以下の「痩せ」は死亡率を著しく高めます。つまり、若年・中年ではカロリー制限が必要になるのに対し、70歳ごろからは栄養の考え方を「ギアチェンジ」してカロリーを多く摂取しなければいけないということです。

筋肉量減少(サルコペニア)に対応するには、カロリーとともに十分量の蛋白摂取が必要です。若い人と同じ量の蛋白を食べても高齢者は自分の筋肉に取り込む能力が低下しています。そのため若い人以上に肉や魚を食べる必要があります(ただし腎機能が低下している人は蛋白制限が必要です)。
骨・関節障害による移動機能の低下(ロコモ)に対しては、栄養の面から高蛋白食およびビタミンDの摂取が勧められます。散歩によって日光を浴びることも大切です。

フレイル予防に栄養・運動とともに重要なのは社会参加だと言います。社会参加とはボランティアや地域活動、他者との交流などを指します。運動習慣はないが社会参加をしている人と、運動習慣はあっても社会参加をしていない人とでは、フレイルのリスクは前者の方が低いことがわかっています。すなわち、人との付き合いがフレイル予防に非常に重要だということです。散歩も、できれば誰かと一緒におしゃべりをしながらするのがよいようです。

外出頻度と認知機能障害との関係を調べた研究があります。1日1回以上外出する人の認知機能低下のリスクを1とすると、2-3日に1回の人は1.58、1週間に1回以下の人は3.49になるとのことです。
孤立した人に対しては、社会資源の提供を受けるように積極的に働きかけることも重要です。以前紹介した「社会的処方」が1つの方法です(2019/10/23)。

かかりつけ医は、こうしたことを理解して患者に関わることが重要です。基礎疾患への適切な医学的アプローチをとりながら、生活の視点を取り込み、多職種連携による支援体制をつくるのが務めとなります。

まる1日の座学が終わり、駅に向かうと帰りの電車は変電所火災のため運行見合わせとなっていました。家まで6.2km、気持ちのよい秋の夕暮れ。歩いて帰宅することにしました。運動不足解消の絶好の機会となりました。2週間前に購入したジョギングシューズを履いていたのも幸いしました。