東京オリンピック・パラリンピック〜事例から考える危機管理〜

第328回ICD(インフェクション・コントロール・ドクター)講習会が先週金曜日の夜、開かれました。オンラインと学会会場との並行開催でしたが、私は病院の自室にこもってオンラインで受講しました。
2019/12/2のブログでお伝えしましたように、ICD更新のため今年は3つの講習会を受講することに決めていました。1つ目(第35回日本環境感染症学会総会学術集会時第323回ICD講習会(横浜市))は2020/2/17のブログで報告しました。2つ目が今回でした。

もともと第94回日本感染症学会総会に合わせ4月18日に開催予定だったのが、新型コロナのため学会とともに延期となっていました。
テーマは「東京オリンピック・パラリンピック〜事例から考える危機管理〜」。今年開かれる予定だった東京オリンピック・パラリンピックを想定してのテーマだったはずです。オリンピック・パラリンピックは1年延期となりましたが、ICD講習会のテーマは元のままとされました。

人気のあるスポーツや音楽会では数万人規模の観衆が肩を接して集まります。これをマス・ギャザリングといいます。マス・ギャザリングは感染症蔓延のリスクとなることは当然想定されることです。しかもオリンピック・パラリンピックとなるとインバウンドと呼ばれる世界中からの大規模な人口流入が起きます。国内では珍しい感染症、とくに熱帯に多い感染症が一気に広がる可能性があります。夏のオリンピック・パラリンピックを前に、インバウンドとマス・ギャザリングで想定される感染症をあらためておさらいしようというのが今回のICD講習会でした。

取り上げられた感染症(病原体)は、結核、麻疹、髄膜炎菌、熱帯ウイルス(デング熱、エボラ出血熱、MERS)、寄生虫(マラリア、クリプトスポリジウム、アニサキス、クドア)、蚊媒介ウイルス(デング熱、チクングニア熱、ジカ熱)でした。
結核や麻疹、髄膜炎菌は日常診療の思わぬ局面で遭遇します。今後は、それ以外の感染症にも配慮する必要があることを痛感しました。風邪と誤診したために死の転帰を辿ったマラリアの症例を聞かされると、身の引き締まる思いがします。

様々な感染症を見ていくと、新型コロナウイルスというのは、あまたの感染症のほんの一部に過ぎないということがよく分かります。その診断と治療についても、既存の感染症での手法を踏まえればよいことが分かります。
勉強になりました。

今年受講予定の最後は9/27の第21回日本病院総合診療医学会学術総会時第339回ICD講習会です。地元さいたま市での開催です。できればオンラインではなく、会場で受講したいと願っています。