火口(ほくち)

日曜日の夜、寝ながらスマホでアメリカのニュースを知ろうとUSA TODAYを開きました(2020/12/8ブログ参照)。ニュースの最初がフロリダ州マイアミビーチの騒動でした。
タイトルの書き出しは「It’s become a tinder」。
先週末、春休みの学生がビーチに集まり、大群衆のパーティをコロナ・パンデミックにもかかわらずあちこちで開いたため非常事態が宣言された、という内容です。一触即発の状態になったことを「It’s become a tinder」と表現しているようです。
恥ずかしながら「tinder」という単語を知りませんでした。
知らない単語はTHE FREE DICTIONARY (TFD)という無料の英語辞書アプリですぐ調べます。「tinder」を長押しでコピーし、ペーストすると意味が出てきます。
1. (Forestry) dry wood or other easily combustible material used for lighting a fire
2. anything inflammatory or dangerous: his speech was tinder to the demonstrators’ unrest.
(1.火を起こすために使う、燃えやすい枯れた小枝など。2.比喩的には、扇情的、危険性の高いもの)。
「It’s become a tinder」は群衆が発火寸前になっている様を表現していました。

でも、「tinder」に相当する日本語の単語は何だろうと考えました。
火種?。でも火種は、火を言うのであって火を受ける小枝には使わない。火起こし?。火起こしは動作を意味しているのだから違う。さて、何だろう。
なかなか思いつきません。

中学生のころ、夏になると野外キャンプに行っていました。マッチに火をつけ、新聞紙や小枝でキャンプファイヤーの火を起こした記憶をたどりました。マッチは思い出します。新聞紙や小枝も思い浮かびます。あれを何と呼んでいたのだろうか。小学生のころ、家の風呂は薪をくべて沸かしていました。最初の火をどうやってつけていたのか。その時、その火種のもとになる紙類を何と呼んでいたのか。燃える物・紙・新聞紙・こっぱ・木の枝、としか言っていなかったように思います。

日本語の語彙の乏しさを憂いながら、結局、グーグルに頼ることにしました。
さっきのコピーが生きています。グーグルの検索ボックスに長押しで貼り付け、日本語サイトに行くようにと「tinder」の後ろにわざわざ「とは」と入れました。
すると・・・。

こんな展開になるとは夢にも思いませんでした。
何じゃこりゃ・・・。
ページをめくっても、まためくっても、肝心の言葉は出てきません。代わって、日本語の別世界が次々現れるのです。引き込まれて次々読んでしまいました。
そして、ため息が出ました。
コロナ禍でもこんな世界が広がっていたのか。驚きでした。コロナが燎原の火のごとく世界に流行する理由(の1つ)が分かった気がしました。

「tinder」のあとに「意味」と入れてググると、正解が出てきます。
「火口(ほくち)」。
日常会話では聞いたことがありません。
アメリカではキャンプが盛んなので「tinder」は日常会話によく出てくるのかもしれません。キレのいい発音しやすい単語なので比喩的によく使われるのかもしれません。
TFDのよいところは、語源の解説が豊富な点です。それによると「tinder」は、古代ノルウェー語の「tyndr」、古代高ドイツ語の「zunten」に関連するとのこと。そう言えばドイツ語に「zünden」(火をつける)という動詞がありますね。

驚きの世界の「tinder」では、「i」のドットが炎のマークになっています。憎い限りです。
ああ、勉強になった。