畑岡奈紗が日本女子プロゴルフ選手権2019で優勝しました。2位に8打差の圧巻の勝利でした。
私が初めて彼女の名前を知ったのは茨城県笠間市の教育委員になった2015年のことです。その年の7月、アメリカで開催されたIMGアカデミー世界ジュニアゴルフ選手権に高校2年生で出場し、個人および団体で優勝したことが教育委員会で報告されました。小学生の頃から知るという教育委員のSさんが「地元笠間市の小学校・中学校を出た将来有望なアマチュアゴルファーだ」と熱く語っていたのが印象的でした。Sさんはこのとき既に畑岡奈紗後援会を組織しており、得意の英語で彼女の活躍をフェイスブックで世界に向けて発信していました。私が埼玉県飯能市の出身だと知ると、「10月30日から11月1日までPONTAレディス2015が飯能市の武蔵丘ゴルフコース(GC)であるけど行きませんか。私は都合で行けないので」とギャラリーチケットを見せてくれました。武蔵丘GCは私の実家から北西に1.5km、歩いて行けます。最終日の11月1日は日曜日ですから仕事がありません。喜んでチケットをいただきました。
3日間のプレーでしたが、2日目を終わってアマチュアの畑岡がトップ3人に入っていました。最終日、大勢のギャラリーと一緒に最終組を追いかけました。茂木宏美・渡邉彩香の両プロと一緒のラウンドでした。この2人はどうみても16歳の畑岡にとっては大叔母と大姉で、貫禄十分でした。畑岡のキャディはお母さんでした。いろいろアドバイスをしているようでしたが、貫禄のプロに圧倒され、残念ながらスコアを1つ落とし7位に終わりました。それでもアマトップでした。翌年秋の日本女子オープン2016にはアマチュア初しかも最年少で優勝し、名前が全国に知られるようになりました。直後にプロ入りを果たしました。
次に会ったのは、本当に偶然でした。
2017年1月9日、水戸のホームセンターで買い物を終えようとしたとき、畑岡奈紗選手サイン会がまもなく始まるとのアナウンスがありました。聞くと、5000円以上購入のレシートが必要とのこと。急いで買い物を追加して1万円以上とし、10人ほどの列に並びました。当然の権利ですので色紙を2枚もらいました。奈紗の名前はアメリカ航空宇宙局NASAに因んでいます。サインもそれを表していました。

私は畑岡奈紗選手が育った背景に興味があります。

笠間市にはゴルフ場が9つあります。その1つ宍戸ヒルズカントリークラブ(CC)
で開かれた男子メジャー大会「日本ゴルフツアー選手権」で社会貢献活動の一環として2003年7月、日本ゴルフツアー機構(JGTO)とゴルフ場オーナーの森ビルとがスナッグゴルフセットを笠間市の全小学校に寄贈しました。スナッグゴルフのスナッグとはStarting New At Golfの略(SNAG)で、ゴルフの基本を学ぶための初心者用ゴルフ競技として2001年アメリカで開発されました。笠間市は青少年の健全育成にスナッグゴルフを推奨するようになりました。このためスナッグゴルフJGTO全国大会で笠間市の小学校は常に上位入賞を果たし、2018年には笠間市立岩間第三小学校が優勝しています。
畑岡奈紗は、岩間第二小学校のときにスナッグゴルフを始め、岩間中学校のとき中嶋常幸プロが主宰する「宍戸ヒルズCC ジュニア育成プログラム(トミーアカデミー)」の第1期生として2012年に入塾しました。中嶋プロはまた、笠間市の小中一貫校でのゴルフ部の立ち上げにも協力し、若手育成に尽力されています。
畑岡の場合、ゴルファーを目指す直接のきっかけはお母さんだったのは間違いありません。しかし、ゴルフを楽しみ、ゴルファーを育てる環境や指導体制が整っていたからのようにも思えます。人材の育成には教育環境、教育体制の整備が重要だということなのだと思います。また、早くからアメリカで歴戦を重ねたことが今の彼女を育てました。
教育の重要性、世界に目を向けることの大切さ。医療もしかりです。

※朝日新聞2019/9/16

※畑岡奈紗選手サイン