秋の庭

2007年春に宇都宮を離れるまで、西ドイツ留学時代を除き、私は庭付きの家にずっと住んでいました。引越しを重ねても庭付きの家でした。
庭のない家など考えられない。本気でそう思っていました。

水戸に引っ越してからマンション暮らしになりました。今のさいたま市もマンションです。草取りがなくなって楽だ。これは本音です。

それでも秋になると手作りの庭が恋しくなります。

最後の庭となった宇都宮の家では、庭づくりに力を入れました。
小さな庭ながら様々な木を植えました。四季を通して花の楽しめる木を選びました。残念ながら陽当たりがよくありませんでした。日陰に強い花木を集めました。アシビ、サツキ、ヒメシャラ、ムクゲ、サザンカ、ツバキ。花は咲かなくても紅葉の映える木を、少しでも陽の射す所に植えました。ニシキギ、メグスリノキ、イタヤモミジなどです。赤い実の美しいウメモドキは門の脇に植えました。下草には日陰に育つタマリュウ、ヘデラ、ハツユキカズラ、ツワブキ、センリョウ、トクサを使いました。
シンボルツリーは、ケヤキとしました。植木屋は「こんな小さな庭にケヤキなどとんでもない」と怒り出しました。「毎年クレーンで枝払いをして盆栽仕立てにすればよい」と主張し、植木屋の納得をもらいました。実際、年2回、クレーンで枝を切ってもらいました。植木屋に払うお金に家内は毎回怒っていました。

2段の棚を作り盆栽を並べました。藤棚を立て、達磨藤に花を咲かせました。小庭の中央部分は那智黒の石を敷き詰め、その中に真っ白な人工アンモナイトの扁平石を置きました。庭の隅には、鳥のための餌台、水浴びを置きました。レンガを積んで小さな野外暖炉を作りました。
1畳ほどのウッドデッキを居間の外に設置し、電動のオーニングで雨除けとしました。夜になると庭のライトアップを楽しみ、雨でもウッドデッキから野外暖炉の火をじっと眺めるのが好きでした。

こうして出来上がった庭を2003年の秋、ビデオに撮りDVDに1枚だけ焼きました。ジャケットとブックレットを手作り印刷してケースに付けました。それが「秋の庭 An Autumn Garden」です。
動画は素人の撮影ですし、当時のアプリとビデオカメラの性能からすれば、編集も解像度もこれが精一杯でした。今となってはお恥ずかしい限りです。YouTubeにアップロードすると画質はさらに落ちてしまいました。それでもよろしければ御笑覧ください*。
*https://youtu.be/SyOaRX8K2Js

やがて宇都宮に別れを告げました。
水戸に引っ越すとき、ケヤキは根元から伐採しました。手入れができなければ近所迷惑になるのです。藤棚も撤去。達磨藤に手を合わせ、成仏を祈りました。大きくなるホウノキもバッサリ切りました。水の流れも埋めました。ライトアップも片付けました。野外暖炉は、最後に壊しました。

荒涼とした庭に変わり果てました。
それまでの自分に決別する意味がありました。悔いはありませんでした。

今また秋。酒を飲みながら往時のビデオで独り懐かしんでいます。