第1波と第2波の死亡率比較

本年8月27日に開かれた埼玉県・埼玉県医師会 感染症対策研修会「インフルエンザ流行時の診療体制について〜新型コロナウイルス感染症を考慮して〜」の概要を8/28の本ブログで紹介しました。その中で演者の防衛医科大学校内科学(感染症・呼吸器)川名明彦教授が述べられた内容をいくつか引用させていただきました。
その1つが第1波と第2波の死亡率比較です。厚生労働省第6回コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(8/24)の資料に基づくデータでした(図1)。
ブログでは、「70歳以上の死亡率は第1波25.1%、第2波25.9%と全く同じであり、50-69歳でみても第1波2.8%、第2波3.1%と変わりません。ちなみに50歳未満は第1波0.1%、第2波0.0%ですから、これも差がありません」と紹介しました。そして「第1波も第2波も死亡率でみる限りこのウイルスの病毒性は変わらない」、「『第1波の経験から治療法が進歩したために第2波では死亡率は低下した』こともないのかもしれません」、「今後のデータを注視したいと思います」と結びました。

その後のデータが厚生労働省第7回コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(9/2)に出てきました。前回会議から9日後に出されたデータです。
厚生労働省のホームページで読むことができます、
新しい資料で70歳以上の調整死亡率をみると(図2)、直近1ヵ月の比較では、5月31日時点:25.5%、8月30日時点:8.1%と後者のほうが約1/3に減少しています。
そうなると「ウイルスの弱毒化がないとすれば、第1波の経験から治療法が進歩した」と言えるのかもしれません。
わずか1週間余りで印象の異なる結果が出てきたことに少々驚きました。

理由は不明ですが、いくつか考えてみました。
1つは「第1波と第2波の比較」という言い方を今回やめていることに関係しているかもしれません。「波」という曖昧な定義ではなく、「直近1ヵ月」のデータを使っています。当然、期間が異なりますので、結果に差が出たのかもしれません。もう1つは「調整死亡率」を今回採用している点なのかもしれません。前回資料でも死亡率(致命率)について「致死率は発症から死亡までの期間を調整して算出したものであり、累積死亡者数を累積感染者数で除した値とは異なることに注意」という注釈がありました(図1)。今回の資料では「調整致命率」という用語が使われています。「調整致命率の推定方法」が別のスライドで細かく書かれています(図3)。ただし、残念ながら専門的すぎて、前回の致命率と今回の調整致命率が同じなのか異なるのか、私には分かりませんでした。

いずれにしてもデータというのは気をつけて解析しなければいけません。こちらも報告を注意して読まなければいけません。
今後のデータを注視したいと思います。