雪の思い出

昨日、関東は昼から雪でした。
車通勤の職員は帰宅を急ぎました。
私も午後6時過ぎ車で帰宅することにしました。
久しぶりのコロナの入院患者さんは軽症でした。
何人かの重症患者さんには、ごめんなさい、と呟きました。

4年前の1月22日、茨城にいたとき、午後から雪が激しく降り出しました。夕方、急いで病院を出ました。しかし、自宅まであと2kmの坂の上で動けなくなりました。坂をノーマルタイヤの車で下るのはさすがに危険と判断しました。
しばらく考えた末、車を乗り捨てました。
雪が降りしきる中、膝まで積もった雪をかき分けながら坂を降り始めてまもなく、後方から来た車がスリップして止まっていた別の車に衝突しました。危うく轢かれるところでした。
危険を感じて引き返し、坂の上に戻りました。
車に入り、このまま夜を明かそうと決めました。
降りしきる雪を空しく眺めて1時間ほど経ったとき、ドアを叩く音がしました。
「動かしましょうか?」
窓の外を見ると2人の男性が立っていました。
「ここにいると危ないよ。そこにうちの駐車場があるから、そこに入れなさい」。

2人が車を押してくれました。道路脇の駐車場に入れることができました。私のほかに何台か駐車場に入れてもらっていました。

「家まで送ってあげるよ」。
年長の男の人が言ってくれました。
「ありがとうございます」。
ご厚意に甘えました。チェーンをつけた軽自動車に乗せてもらって2km先の我が家まで送ってもらいました。事故があちこちで起きていて2kmの道のりも30分以上かかりました。
車の中でお互いを紹介し合いました。
男の人は坂の上のレストランのご主人でした。
私からは、病院勤めの医師であることを伝えました。

後日、お礼を兼ねてそのレストランで食事をしました。
そのとき息子さんを紹介されました。
先日の息子さんとは別の息子さんでした。その日はお父さんのお店を手伝っていました。

「看護学生です」。
にこやかに好青年が挨拶してくれました。
どこの学校?、何年生?
客との話ですので詳しいことは教えてもらえませんでした。

半年ほど経ったとき、ある大学の看護学部に講演を依頼されて出かけました(2020/9/15ブログ)。
そこに、あの時の看護学生がいました。
特に名指しはせず、「人の優しさは医療ではとても大切なのだ」と、精一杯の気持ちを講堂の学生たちに伝えました。