日本の人口構成を見ると、1950年はピラミッド型で、2020年は逆ピラミッド型に近く、2050年の予測ではほぼ完全な逆ピラミッド型になります(図1)。逆ピラミッド型は異常だとよく言われます。確かにそうかもしれませんが、ピラミッド型のほうがもっと異常だと思います。なぜなら、幼くして、若くして、中年になっても毎年一定の割合で死んでいくからです。医療の不備、社会安全性の不備と言わざるを得ません。だからピラミッド型のほうがものすごく異常なのです。
一方、逆ピラミッド型は、毎年の出生数が減っていることは異常であっても、いったん生まれれば、幼くても、若くても、中年でもほとんど死なないことを意味します。また、てっぺん近くの幅が広いのは団塊二世のためです。つまり太平洋戦争のせいであって、現代〜近未来の社会が直接引き起こすことではありません。また、少子化の問題は、前回述べましたように、生きがいさえ見つかるようにしてあげればすぐに出生数は増しますので、解消はさほど困難ではありません。したがって、2060年ごろに出来上がる逆ピラミッド型は社会的な大問題とは私は考えていません。

では、理想の人口構成はどうあるべきでしょうか。簡易生命表が参考になります。生まれてから1年ごとの生存率を表にしたものです。これを積み上げていくと、医療レベルが一定程度高く、社会安全性が保たれているときの人口構成がグラフで表せます。
それを示したのが図2です。ピラミッド型でも逆ピラミッド型でもありません。釣鐘型と呼ばれる形です。
この現代版理想形の人口構成の場合、65歳以上の高齢化率は24.4%になります。75歳以上は14.0%です。
団塊の世代を擁する2018年の65歳以上の高齢化率は27.7%です。理想形より3.3ポイント多いだけです。高齢化率が20%を超えた、25%を超えたと騒ぐのは筋違いです。ただし、この65歳以上高齢化率はこのあと増え続け、2065年ごろに40%となります。この40%はしばらく続き、2100年まで続くとされます(図3)。図3はよく見る図です。私が知りたいのはその先です。その先の図は目にすることがありません。その先はおそらく、高齢化率は下がり始めるはずです。いつごろ下がり始め、どう落ち着くか興味があります。
私が調べた限り誰もそれを示していないようですので、私が示します。
およそ図4のようになると推測します。
前述のように、現代版の人口構成理想形での65歳以上高齢化率は24.4%ですが、2100年以降はもう少し伸びて25%、ひょっとして28%くらいになるかもしれません。ここでは25%とします。第3次や第4次世界大戦がないという前提だと、この安定した数字に落ち着くのは今からおよそ150年後の2165年ごろと推測します。
150年というのは、過去に遡ると平成+昭和+大正+明治=151年ですので、明治維新から平成最後までの期間と同じです。これと同じ期間の未来で日本の人口構成は理想形に落ち着きます。

しかし、もう少し考えてみたいと思います。65歳以上が本当に高齢者にふさわしいのか、ということです。人生100年と言われる時代、高齢者の定義は変えたほうがよいはずです。
日本老年学会・日本老年医学会が提言するように、75歳以上を高齢者とするのが私は妥当だと思います。このように高齢化率の定義を変えると、現代の高齢化率(75歳以上)はたったの16%くらいです。75歳以上高齢化率のピークは2080年ごろに訪れますが、そのピーク値は、せいぜい25%です。何ということはありません。現在の定義である65歳以上高齢化率27.7%よりも低いのです。
会社員や公務員の定年が55歳だった時代に作られた高齢化率というのは65歳以上のことでした。定年が伸びてきた1980年ごろから、高齢者は実は65歳以上ではなく70歳以上に、そして徐々に75歳以上になってきたと言えます。私はその「実質高齢者」の割合を「実質高齢化率」と名付け、過去から未来に向けての推移を図4の点線に表してみました。過去の分は、1980年ごろの65歳以上高齢化率から徐々に75歳以上高齢化率に移していき、現在から先は実質高齢化率=75歳以上高齢化率としてグラフ化しています。実質高齢化率は、150年後の2165年には人口構成理想形の数字15%(現在の値14%に長寿化の要素を加えて15%と推測)に落ち着くはずです。

高齢化率を取り上げて論じてきました。
私の結論は、高齢者は将来少し増えるけれども悲観する必要はない、ということです。

(図1)

 

(図2)

 

(図3)

 

(図4)