先日、所用で埼玉県庁を訪れました。

45年前、医師国家試験に合格し、医師免許証は本籍地で受け取るとのことで、埼玉県庁に取りに行って以来です。
記憶はかなり薄れていましたが、今回、県庁前の独特の道路の曲がりを見て、昔を思い出しました。建物の記憶も少し残っていました。

一方、担当部署に赴いて医師免許証をもらったときの記憶は、今でも鮮やかに覚えています。
なぜなら、その免許証は比較的小さな封筒に入っていて、そこから取り出したところ、しっかりと2つ折りになっていたからです。一瞬、驚きました。でも文句を言わず、丁重に受け取りました。
県庁の人が折ったのではなく、おそらく厚生省(現 厚生労働省)の担当者がそのような形で埼玉県庁に送ったのだと諦めました。でも、医師となった意気込みが少し折れたことは確かです。

以後、埼玉県との縁はなく、東京、群馬、栃木、茨城と県外で勤務を続けました。
その都度、この医師免許証は各病院に提出してきました。2つ折りの跡がくっきり残る免許証を提出するたびに、埼玉県庁で受け取ったときの驚きが蘇ってきたものでした。
今年4月、さいたま記念病院に赴任し、久しぶりに医師免許証を出して見ました。2つ折りの跡をあらためて見ました。感慨というものは最早ありませんでした。
もう半世紀近く前のことです。

私の医籍登録の日付は11月7日です。1968-1969年に吹き荒れた大学紛争の影響でカリキュラムが半年延びたため、9月に卒業し秋の医師国家試験を受けたからです。当時、医師国家試験は春と秋の年2回行われていました。しかしその時代はとっくに終わりました。すべての思い出は遠い過去のものとなりました。
長い人生の涯に故郷にもどって来たのだ、との思いだけが込み上げてきます。