ヒートショックを予防しましょう(院長)

ヒートショックを予防しましょう(院長)

循環器系疾患による死亡数は12月・1月の冬場が多く、夏場の約1.5倍です。冬場に致命的ともなり得る心筋梗塞や狭心症が多い理由としては、やはり“寒さ”による血圧上昇や大きな寒暖差による血圧の急激な変動が考えられます。今回は、気温の変化が原因となる血圧変動、ヒートショックとその予防法について記載します。なお、本文の要旨は公開医学講座(2026年10月17日)にて発表しました。

Ⅰ.ヒートショックとは?

気温の変化による血圧の変動(上下)によって心臓や血管の疾患がおこることをいいます。65歳以上に多く、好発時期は11月~2月です。朝晩の寒暖差の大きい日は要注意で、特に最高気温と最低気温との差(日較差)が10℃以上あると危険とされています。疾患としては、血圧上昇によるものが脳内出血、大動脈解離で、血圧低下時には脳梗塞、心筋梗塞などが起こりやすくなります。

Ⅱ.温度差による血圧の変動

人間には気温に左右されずに体温を適正に維持する機能があります。寒い時には末梢(手足の)血管が収縮して熱を逃さないように、暑い時には末梢(手足の)血管が広がり熱を放出するように働きます。血液の量は変わらないのに、血管が収縮したり拡張したりするので、血圧が上下するのです。

Ⅲ.入浴時の血圧の変化

わが国では他国と比べて高齢者の浴室での溺死事故が多数です(資料1)。欧米では入浴はシャワーが主ですが、わが国では湯船に浸かることが日常的です。皮肉なことに、この伝統的な入浴スタイルが事故につながっています。特に、高血圧がある方では、入浴による血圧の変動が大きくなります。

Ⅲ.入浴中の事故

温熱効果による末梢血管の拡張等により,血圧低下,心拍数・心拍出量の増加が起こります。高齢者では血圧低下による脳血流の低ドにより失神して溺水,転倒するというような危険性があります。また、入浴前の血圧が160以上の場合には、その時点での入浴は控えた方が良いようです。

 

入浴中の重大事故(心肺停止)の全国集計(資料2)では、発生件数の少ない上位2地域は沖縄県と北海道です。このことから,気温のみでなく室内の温度,空調が入浴事故の発症に深く関係していることがわかります。ちなみに、埼玉県は少ない方から10番目です。

まとめ

・ヒートショックの予防には、急激な寒暖差を避けることが第一です。室内の温度調節も必要ですが、外出時(特に朝方)には十分な服装を準備しましょう。

・入浴時には血圧が変動するので注意が必要です。特に過去に失神歴のある方では本人、家族共に注意して下さい。

・高血圧で通院・内服中の方は普段の血圧が安定しているので、冬場でも極端な血圧上昇をきたすことは稀です。未治療の高血圧がある方は、早めの受診をお勧めします。

(資料1)Lin CY, Wang Y-, Lu T-H, et al.

Unintentional drowning mortality, by age and body of water: an analysis of 60 countries.

和訳:60か国における溺死に関する年齢と水域からの検討)Inj Prev. 21; 2015: e43–e50. 

 

(資料2)高橋龍太郎,他:わが国における入浴中心肺停止状態(CPA)発生の実態一47都道府県の救急搬送事例9360件の分析一.2013(報告書).

2026年10月18日

石川 進

(付録)冬場の健康管理